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2006年10月 9日 (月)

教育バウチャー制度は魔法の杖になるか

 安部内閣が発足、「美しい日本」を目指し各種の改革案が示されています。中でも教育改革を柱に据え、日本の未来を背負う子ども達に対する教育改革案を提示、その施策を具体化しようという姿勢には大賛成です。

 新聞報道(朝日・読売・産経)によれば、教育バウチャー制度が文部科学省教育バウチャーに関する研究会で議論されていると聞きます。耳慣れない、教育バウチャー制度は、まだ議論の途についたばかりであり、今後の検討の推移を見守りたいと思いますが、教育バウチャー制度というものが本当に現行の教育改革案として実行効果があるものかどうかに疑問符をつけざるを得ません。この制度を導入する事によるメリットは何かと考えた時、現行制度の問題点を払拭できるだけの効果が期待できるか甚だ疑問であり、ちょっと目先の変わった施策を教育改革だと叫ぶ人の気持ちがわかりません。

 教育バイチャー制度のバウチャー(voucher)の意味は、利用券・引換券の意味だそうで、教育を受けたい人にある基準によってこの券を配布、公私立を問わず自らが通いたい学校を選んで学ぶ事ができるようになります。学校側は、利用数に応じた運営資金を得ることができ、たくさんの生徒を確保できた学校は資金が潤沢となり、学校選択性と組み合わせることで学校間に競争原理が働き、教育の質の向上が期待できると言われています。

 すでに諸外国(米国・英国・ニュージーランド・チリなど)で導入されておりその実情が報告されています。クレア海外通信ニューヨーク事務所「アメリカの教育バウチャー制度」によれば、全米3州で導入されており、主に生活困窮レベルの人々が利用しているようです。制度上の問題点として①政教分離違反(政府の宗教介入)②コスト負担(結果として教育費増大)③教育成果(学力到達度の顕著な改善指標がない)などが問題となり、1部の州では、裁判で係争中であると伝えています。

 教育制度や経済状態の異なるアメリカの例が全てとは言いませんが、今日本で議論されていることが机上の空論とならないことを期待します。学校設置会社連盟の提言書を読むと、①児童・生徒・学生は、国公立を問わず、自己の目的に応じて学校を選ぶ事ができるようになり、自己の人格・知識・技能を完成・向上させるために必要な学習を自らの選択により行なう事が可能になるものと期待される②学校は、生徒等に支持される教育の提供に向けた教育内容の個性化・多様化、学校間の競争による教育の質の不断の向上、ガバナンスの改善、積極的情報提供が図られると期待される③政府は財政支出の削減が期待されると述べています。現在でも既に取り入れられていることであり、更に支出削減に寄与できるのか甚だ疑問と思うのは筆者のみでしょうか。

 推進派と慎重派とに二分されている現状を鑑み、新しいものを導入するよりも先に、現状の問題点・改善点・改革案を優先して議論されるべきと思います。【了】

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