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2011年7月29日 (金)

医療事故の刑事裁判は馴染まない?-日医総研シンポジウム-

 24日、日医総研シンポジウム『更なる医療の信頼に向けて-無罪事件から学ぶ-』が日本医師会大講堂(東京都文京区)で開催され、弁護士や患者遺族など500名以上が熱心な討議を行いました。

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(写真:シンポジウムの行われた日本医師会館。関心の高いテーマのためか、全国各ブロックからの参加者を交え、終日熱心な討議が行われました。)

 最初に東京大学法学部教授 樋口範雄氏の「医師法21条を考える」と題する基調講演が行われました。続くシンポジウムでは、東京女子医大事件・杏林大学割り箸事件・県立福島病院事件の医療裁判を基に討議が行われ、締めくくりに「医療事故と刑事裁判」のパネルディスカッションを行って閉幕しました。医療事故を刑事裁判化しても医療安全には寄与しないことは明らかだとして、第三者による中立な調査機関創設の必要性を訴えました。立場が異なる患者の会や国の動向が今後注目されます。

討議の中から、興味を引いたいくつかを紹介します。

●制裁型の刑事罰は医療安全には馴染まない

 樋口教授は、「いくつかの刑事裁判で無罪判決が出た今日でも、制度は何も変わっていない、現在のような制裁型では医療安全に寄与しない」と述べました。また、注目されている「医師法第21条は改定できるかと問われればYES、ただ条文としては正しいと考えており、むしろ罰則規定を外すべきではないかと思う。刑罰でしばる必要はない」と、第21条改定への思いを語りました。

●刑事裁判は医師を萎縮させるか

 東京女子医大事件の佐藤一樹医師、県立大野病院事件の加藤克彦医師がそれぞれ当事者の立場で発言がありました。いずれも無罪を勝ち取ったものの、その後の活動に大きな妨げとなった事実を挙げ、「刑事責任を追求することは、医療安全の阻害要因になる」と佐藤医師は語っていました。裁判に勝っても負けても報われない現実があるようです。

●事故調が進まない原因は何か

 医師法第21条を改定するかしないかが大きな争点になっています。「医療行為についての届け出は廃止すべきである」という意見がある一方で、「悪意ある行為、隠蔽、改竄など、明らかに処罰の対象となる事例​を、明確に排除しうるシステムをどう構築するか」が大きな課題となっています。更には、一般の関心が薄く盛り上げに欠けることが別の要因として考えられます。

 ところで、日本医師会はこのシンポジウムに先駆け、医療事故調査に関する検討委員会(プロジェクト)答申「医療事故調査制度の創設に向けた基本的提言」を7月13日に発表しています。

 医療版事故調は長らく議論されながら創設するに至っていません。先の政権交代時、かなり煮詰まりかけましたが現政権に移ってから遅々として進んでいない現状です。不幸にも医療事故が発生した場合に「原因究明と再発防止」を目的とする事故調の創設は、多くの国民の願いでもあります。医師会の動きが、患者(遺族)・医師(医師会)・国(厚労省)の三位一体となった本格的な議論につながり、事故調設置に拍車がかかることを期待したいものです。

 日医は提言の基本的な考え方として、医療事故調査制度創設の目的は「医療事故の真の原因究明と再発防止である」と明記した上で、次の5項目を挙げています。

1)全ての医療機関に院内医療事故調査委員会を設置する。

2)医療界・医学界が一体的に組織・運営する「第三者的機関」によって医療事故調査を行う。

3)医師法21条の改定を行う。

4)ADR(裁判外紛争解決手続)の活用を推進する。

5)患者救済制度を創設する。

医師法21条の改定には、【医療行為に関連した死亡は医師法21条が対象とする「異状」に含めず、罰則は廃止、24時間以内の届け出義務は課さない】など、医師への刑事罰を求めない内容となっており、今後更なる論議を呼びそうです。

■医療事故調査制度の創設に関心を持とう

 医療事故や医療過誤という言葉を聞いたことはあるものの、さしたる関心がないという人がほとんどです。当事者や家族でないとその苦しみは分からず、つい二の次にしがちです。専門的な議論は別にして、医療事故や過誤はいつわが身に起こるかもしれない重要で大きな問題です。筆者が所属するボランティア組織では定期的に医療相談を行っていますが、毎回深刻な医療に関する相談が寄せられています。決して他人事ではない医療事故や過誤に関心を持ちましょう。そして「医療版事故調」創設の行方にも注目して欲しいと思います。【了】

■参考情報

日医HP定例記者会見

http://www.med.or.jp/teireikaiken/index.html

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2011年7月28日 (木)

小林メディカルが親離れした途端に薬事法違反!

 「あったらいいなをカタチにする」開発中心型企業で知られる小林製薬㈱のユニークな製品には脱帽です。業績好調で、12期連続の実質増配を続けています。件の小林メディカル㈱は、2010年4月小林製薬株式会社メディカル事業部から分離独立した会社で、業容の発展に期待がかけられていました。ところが、親離れした途端に薬事法違反を犯し、制裁を受けることになったのです。何とお粗末なことかと嘆かざるを得ません。

 2010年10月に承認申請した医療器具2製品の承認申請資料の一部において、実際の試験データと異なるデータを記載していたことを報告した(虚偽申請)ことが問われたものです。

 独立した気負いと焦りがこの様な結果を招いてしまったのではないかと思えてなりません。ミッションにある、【お客さまに提供させて頂く、営業、製品、技術、サービスなどあらゆる領域の質の向上に努めながら、コンプライアンスを遵守するとともに、良き市民企業としての新生「小林メディカル」のコーポレートブランドを一日でも早く確立致します。】はどこにいってしまったのでしょうか。子からしっぺ返しをくらった形の小林製薬はどう感じているのでしょう。

 同社ではすでに対応策を発表していますが、この機に及んで「コンプライアンス委員会の新設」は遅きに失した感を否めません。「薬じゃないから、まあいいか」などと、医療機器・器具を軽んじているとすれば言外です。猛省と再起に期待します。【了】

■参考資料

小林メディカル㈱HP 2011/07/27薬事法違反に係る行政処分について

http://www.kobayashi-medical.com/info/20110727/index.html

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2011年7月26日 (火)

もし家族が医療事故にあったら?事故調創設に向け院内集会

 26日、参議院議員会館101会議室で医療事故調査制度の確立を求める院内集会(主催:患者の視点で医療安全を考える連絡協議会、医療版事故調推進フォーラム)が開催されました。現政権交代前に、医療安全調査委員会創設の議論が熱くなされたにもかかわらず、第三者調査機関創設に向けた動きは停滞したままです。誰しもが焦燥感に捉われていた中、13日に日本医師会が「医療事故が発生した場合に医療機関が院内で行う事故調査」と「公正中立な第三者機関で行う医療事故調査」の両制度の確立を求める提言を公表しました。

 日医の提言を受け、医療事故調の創設に向け大きな一歩を踏み出すべく、主催者から内閣総理大臣及び厚生労働大臣に対し、医療事故の第三者調査制度の構築及び院内事故調査制度の法制化を求める意見書を提出、あわせて院内集会を開きました。

 院内集会には、約60名程と国会議員数名が出席しました。議員から一様に口から出たのは「進捗しない状態にあることを陳謝し、今後積極的に取り組む」との曖昧な話でした。一方、医療問題に造詣のある、川田龍平氏(みんなの党)は、「先の選挙により定員増となり厚生労働委員会のメンバーにも加えられたことから積極的に取り組む」との意気込みを語りました。会合のメンバーは医師が多く、どうしても医療側の発想になりがちなので、川田氏は患者側に立ったメンバーとしてものを言って行くとも話していました。また、医師でもある古川俊治氏(自民党)は、機運が熟していないことを憂慮し、運動を更に広げていくことが必要であるとの認識を示し、「責任を持って患者を見る」と決意のほどを述べていました

 医療事故で年間2万人以上の方が亡くなっていると言われています。放置するには余りに大きな問題です。残念ながら、国として医療事故の再発防止・医療安全にどのように取り組むのか現政権の考えが未だ見えていません。

 国民一人ひとりが医療事故調査制度に関心を持ち、行動を起こすことが創設への原動力となります。いつわが身に降りかかるかも知れない医療事故、当事者になった時慌てふためくことがないよう、日頃から関心を持っていたいものです。【了】

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2011年7月22日 (金)

かながわ散歩みち(24)横浜市内唯一の渓谷公園

 横浜市内に渓谷公園があると聞いて早速出かけてみました。横浜駅を基点とする相鉄線でわずか10分、目的地の「上星川駅」で下車します。今回は、上星川駅~蔵王高根神社~川島町旧配水計量室上屋~水道記念館~陣ケ下渓谷公園~杉山神社~両郡橋~上星川駅を散歩します。

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(写真:相鉄線上星川駅、ローカル駅らしく静かな佇まいでした。駅の両側は坂道の連続です。)

 昨日まで台風の影響を受けた関東地方。今朝の気温は25℃、そよぐ風が気持ち良い爽快な朝となりました。相鉄線に乗ることが少ない筆者にとって、市内でも少ない未体験ゾーンです。

■蔵王高根神社

 創建は不詳。古くからこのあたりには蔵王社と高根社があったそうです。境内に坂本町内会館が建っており、鳥居の階段の下に馬頭観世音があります。明治43年の一村一社の方針から、神社合祀政策で合祀され、昭和24年に再び分祀して独立したと伝えられています。

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【道案内:駅を出て、相鉄ローゼン前を通り、橋を渡ると蔵王神社前交差点に出ます。】

■横浜水道記念館

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(写真:入口の庭園噴水の水がとても綺麗で、ここでは水遊びができ、小学生の団体が訪れていました。)

 日本の近代水道発祥の地でもある横浜を象徴する記念館です。1987年(昭和62)、横浜水道創設100周年を記念して作られました。館内では、水道の歴史(ひしゃく一杯の水が貴重な時代から、日本で初めての近代水道の創設、そして現在に至るまで)を資料や映像等で見ることができます。また、技術資料館では、水道の技術的な資料を年代と共に技術の変遷を知ることができる展示ブースがあります。記念館の屋上は展望室になっています。

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(写真:前庭にある休憩所【標高72mの高台】からは、みなとみらい地区の横浜ベイブリッジやランドマークタワー等を眺望できます。訪れた日は薄曇りで、新宿副都心の高層ビル群までは望めませんでした。)

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【道案内:蔵王神社から「水道みち」と言われる急坂を登りきった高台の右手にあります。道を挟んで左側に横浜市水道局西谷分庁舎があります。】

■陣ケ下渓谷公園

 横浜市内で唯一、渓谷としての景観を保っている公園です。陣ケ下の地名は、源頼朝の家臣である和田義盛がこの近辺に狩のための陣を張ったことに由来していると伝えられています。狩りをする場所であったくらいですから、相当な広さであったであろうと想像されます。その名残を僅かに残し、強い日差しを遮る深い森、岩場をとうとうと流れる水、五感をくすぐる涼風が心地よさを誘います。総面積15ha(約45,000坪)で、雑木林には植物の種類も多く、杉やヒノキの暗い林回りにはシダ類が生息しています。これほどの渓谷が市内にあるとは信じられない思いでした。道に迷わないよう、散策をお楽しみください。

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【道案内:水道記念館を出て下り、環状2号線市沢下町交差点を右折します。ほどなく進むと左手にうっそうとした森が見えてきます。他に近道もあります。】

■杉山神社

 地元川島町の鎮守様です。天文年間、北条氏康がこの地に陣を張った際、祠を建てて武運長久を祈ったのが始まりとされています。横浜市内には数十の杉山神社があり、そのうちの一社で、日本武尊(ヤマトタケルノミコト)と五十猛命(イソタケル)を祭神としているそうです。

【道案内:公園内の妻恋稲荷横から階段を上ったところにあります。】

 全行程約4.5Km、万歩計のカウントは7602、消費カロリーは169Kcalで、約1時間50分のかながわ散歩みちでした。【了】

■参考情報

横浜市保土ヶ谷区HP

http://www.city.yokohama.lg.jp/hodogaya/map/guidemap.html

横浜市水道局HP

http://www.city.yokohama.lg.jp/suidou/kyoku/torikumi/suidou-pr/kinenkan/

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2011年7月17日 (日)

【My Photo】マリーゴールド

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(撮影:宮本 聰 2011年7月17日 ベランダにて FinePix HS 10 f/3.6 1/100sec. ISO-200)

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2011年7月11日 (月)

ジェネリック医薬品の普及には薬価改定しかない!

 8日、日本ジェネリック製薬協会が発表した「平成22年度ジェネリック医薬品シェアについて」によれば、昨年度の後発品の数量ベースでのシェアは23.0%(前年度から2.7ポイント増)で、金額(薬価)ベースでみると、シェアは9.4%(前年度から0.9ポイント増加)であったと発表しました。

 このままいけば、来年度の政府目標である「数量シェア30%以上」を達成するのは極めて難しい状態です。これほど「ジェネリック医薬品の普及を」と呼びかけてきた厚労省も打つ手なしといったところです。

●啓発活動はもはや限界

 TVでのジェネリックメーカーの宣伝もあって、ジェネリックを知らない国民はほとんどいないでしょう。医師がジェネリックを拒否しないようなカルテの工夫に加え、健保組合や一部の市町村では独自の啓発活動を展開し、ジェネリックの積極使用を呼びかけてきました。努力の甲斐があって、普及に弾みがかかりました。しかし残念なことに、普及率が25%程度で頭打ちになっている状態です。

●医師だけを責められない

 ジェネリック医薬品の信頼性や安定性、種類の少なさや在庫などの問題、医師の新薬志向性などから医師がジェネリックを使用したがらないのが現実です。使っても使わなくても、医師にとってはどちらでもいいのです。その理由は様々です。定番の忌避理由を並べ立てても、医師達を責めても解決には近づきません。

●さらなる薬価改定が必要

 先の薬価改定でジェネリック医薬品関連の薬価が引き上げられました。その効果は顕著でした。結局のところ、医師が実入りの少ない処方を避けるのは道理であり、経済原則に基ることを裏付けました。綺麗ごとやお題目では解決できません。来年度の「数量ベースで30%以上」を目指すには、もう一段の薬価改定が必要なようです。ターニングポイントである「医師の決断」のレスポンスは、とてつもなく早いと思われます。【了】

■参考情報

日本ジェネリック製薬協会HP

http://www.jga.gr.jp/media/material.html

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