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2013年10月19日 (土)

今のままなら医療界の利益相反構造は変わらない!

 降圧剤「ディオバン」を巡る製薬企業の関与が問題視され、社会問題として大々的に取り上げられました。当事者であるノバルティスファーマが研究委託先に巨額の寄付金を支出していた実態が明らかにされ、製薬企業と大学との利益相反構造に疑問を投げかけました。製薬企業にとって有利なデータを提供するかわりに、法外な研究費と寄付金を得るなど以ての外と誰しも思います。ただ、批判するのは簡単ですが、その根底には何があるのでしょうか。癒着とも思える、利益相反構造は大学に限らず、病院や診療所でも同じです。

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 診療所に行くと、製薬企業が作成した病気に関する小冊子が並べられ自由に持ち帰りできるようになっています。廊下には製薬企業名入りの掛け時計やカレンダー、診察室に入ると人体構造模型やメモパッド、ボールペンからティッシュBOXまで、ありとあらゆるものを見てとれます。これらは全て製薬企業からの贈呈品(販促品)です。ある記事で読んだのですが、「医者は常に利益相反の絶妙なバランスの中に置かれている」と吐露しています。なにも珍しいことではないのです。

 著名な医師を講師として呼ぶと、講師謝礼金はもちろん交通費・宿泊費・飲食費は企業側が負担します。中には夫婦連れや名所見学の費用まで請求してくる猛者もいます。筆者が現役時代のことです。講演会の講師を依頼した大学の教授から、「一日早くチェックインしたので宜しく」との電話がありました。そんなと思いつつもダメと言えるはずもありません。後日、前泊分の旅費・食事代の請求書が都心の最高級ホテルから送られてきました。こんなことは日常茶判事で数えたらキリがありません。流石に近年、このようなことはできないようです。現に多くの製薬企業は研究開発費の使途を開示するようになりました。HPで公開している企業も珍しくありません。ただ、表面的なものに終わらず、中身の透明性をさらに増して欲しいものです。

 別の観点から製薬企業だけでなく医薬品卸企業の存在を見逃すことができません。医療用医薬品・医療機器は特殊な流通ルートとなっており、製薬企業が学術宣伝を担い、卸企業が価格交渉し納品することになっています。卸企業と医師との間にある利益相反も似たようなものです。研究委託を直接することがないため金額の桁は違いますが、この問題を解決する上では国はもちろん、製薬企業・医薬品卸・医療機関の3者の足並みが揃わなければなりません。

 製薬会社と医師とのモラル以前に利益相反が起きる原因の根っこには、政府が大学などの医学研究にあてる科学研究費の少なさにあります。その額は今年度2381億円で、製薬会社大手が研究機関に資金提供した約2300億円(12年度)とほぼ同額であり、大学などの研究機関は約半額を製薬企業から得ていることになります。基礎研究から臨床研究までお金が全てであり、お金集めが医局のボス(教授)の最大の仕事と言われるくらいです。今回の事件で学術研究が民間企業の資金提供に依存している実態が浮き彫りになりました。また、国は知っていながら見ぬふりをしてきました。医療産業をアベノミクスの経済政策とするならば、今以上に強力なバックアップが必要です。相応の助成が行われなければ利益相反構造は決して変わりません。【了】

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2013年10月 9日 (水)

【My Photo】ジュウガツサクラ

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(撮影:宮本 聰 2013年10月8日 新宿御苑にて OLYMPUS VG140 f/3.4 1/500sec. ISO-80)

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2013年10月 6日 (日)

患者に優しいがん治療とは?

 いまだ不治の病と感じている人が多いがんに関する最新の知見を深めようと5日、パシフィコ横浜国立大ホールで開催された第22回癌学会の市民公開講座「患者に優しいがん治療」に足を運びました。がん治療に関してはつい最近、がん幹細胞の存在がクローズアップされ、日々の研究開発に期待を寄せる患者・家族は多いことと思います。

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(会場となったパシフィコ横浜国立大ホール。5002人収容の横浜屈指のイベントホールです。)

 一日中雨が降り注ぐあいにくの天候となりましたが、会場にはがん治療に関心のある市民多数が参集しました。4題のテーマのうち、「がんペプチドワクチン療法」と「日本発のロボット手術の開発へ」に興味を惹きつけられました。

【がんペプチドワクチン療法】

近畿大学外科 教授 奥野清隆氏

 第四の治療法として期待がかかるがんペプチドワクチン療法は、司会を務めたシカゴ大学医学部教授 中村祐輔氏の功績によるところ大で、国内でも徐々にその輪が広がっています。一部の大学では臨床研究が一段と進み、民間医療機関では既に樹状細胞ワクチン療法による治療が行われるようになりました。ワクチン療法は副作用の少ない治療法で、患者に優しいがん治療そのものです。

奥田教授は、標準治療に抵抗性となった再発性大腸がん治療の実際を解説した後、今後の展望として①標準療法不応の進行・再発大腸がんに対するランダム臨床試験②ステージⅢ大腸がん術再発予防等の必要性を述べました。創薬化はすぐそこまで来ており実用化に期待を持たせました。また、話の終わりに「日の丸印のペプチドワクチンを早期に出したい」との決意を述べていました。

【ガスレス・シングルポート・ロボサージャン手術】

東京医科歯科大学 教授 木原和徳氏

 東京医科歯科大学腎泌尿外科教室が臨床応用を開始した「ガスレス・シングルポート・ロボサージャン手術」は、手術にCO2ガスを使わず、コイン程度の単一の孔(シングルポート)から、ロボット様に機能を高めた術者(ロボシャージャン)が行う手術のことで、多機能の3Dヘッドマウントディスプレイを眼鏡のように装着します。ロボット手術の利点を備えながら、低侵襲と安全を兼ね備えた日本発のロボット手術が、がん手術にも期待されそうです。

木原教授は、この手術を「最先端型ミニマム創内視鏡下手術」として普及を図りたいと考えています。現在のロボット手術は、装置が高額(2億円)であり、保守及び消耗品費も高いことから患者そして施設にとって大きな負担となっており、ガスレス・シングルポート・ロボシャージャン手術は既存のロボット手術の課題を克服できるものであるとしました。この方法は、世界が迎える超高齢化社会に貢献できる手術であり、既に外国への紹介を始めているとも述べました。

 講演会の冒頭に近藤 誠氏を例に挙げ、「近頃、がん治療無用論の一部医師の考えに流される風潮があるが、癌学会としては断じて組しない」旨の挨拶がありました。がん治療の難しさを考えさせられる異例の一言でした。ワクチン療法を巡っては賛否両論あり、これから先その有効性をエビデンスを持って実証できるかが問われます。がん治療に携わる医師・研究者への期待は大きく、今後の動向に注視したいと思います。【了】

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