2016年6月27日 (月)

利便性に欠ける横浜市の無料定額医療施設

 無料定額医療施設をご存じでしょうか。日本は国民皆保険、つまり国民全員が何らかの公的医療保険に加入することになっていますが、さまざまな事情で医療機関を受診しにくい人もまれではありません。例えば生活費に困っていて、自己負担が多額になると払えない人などです。

 そうした「医療難民」を救済する方法として、社会福祉法で定められた第2種社会福祉事業のひとつである無料定額医療施設というものがあります。医療機関が都道府県または政令市、中核市に届け出て実施しているもので全国に500余あります。本当に困っている人にとっては救世主というものです。

 ところで、横浜市にはこの無料定額施設が全部で20あります。その内訳をみると特定の地域に偏っているのが見てとれます。どうしてこんなに偏りがあるのでしょうか。これでは必要な時に必要な医療がうけられません。

●偏り過ぎる開設場所

開設場所と施設数は、鶴見区(5)、神奈川区(3)、保土ヶ谷区(3)、戸塚区(2)、この他に中区・南区・港南区・旭区・金沢区・緑区・泉区に各1となっています。人口の多い順かと思いきやそうでもありません。横浜市の総人口はおよそ3百73万人で、多い順で行けば、①港北区(約34万6千人)、②青葉区(約31万人)、③鶴見区(約28万7千人)となります。人口の最も多い港北区にはひとつもありません。隣接する鶴見区や神奈川区に行きたくとも無理というものです。

●設置・運営主体に偏向性

施設の設置・運営主体を見ると、①公益財団法人(11)、社会福祉法人(6)、一般社団法人(2)、医療生協(1)となっており、その公益財団法人とは「横浜勤労者福祉協会」です。(2015年1月5日現在)

全国的に代表的なのは、済生会の病院・診療所です。恩賜財団済生会(社会福祉法人)は、もともと貧困者医療のために明治天皇が出したお金をもとに設立されたからです。横浜市の場合、横浜勤労者福祉協会が主体的に動いています。特定の運営主体に任せようとすると適正配置が損なわれます。なお、鶴見区にある汐田総合病院は1965年から無料低額診療事業を行なう福祉医療病院となり今日に至っています。

●誰もがアクセスできない不平等性

開設者と場所の偏りは、「使いたくても使えない」という不平等を生じさせています。医療難民はどの区にもおり、一般論でいえば人口が多い区ほど需要は高いはずです。港北区や青葉区に無料定額医療施設がないのはなぜなのでしょうか。一部の市民だけしか利用できない現状を改めるべきです。健康福祉局に善処を求めたいと思います。

 ひとつ留意すべきことがあります。課題でもあるのですが薬が無料ではないことです。仮に診療費の自己負担が無くても、薬代がかかってしまうことです。薬代が有料というのはあまりに実情を無視した尻切れトンボな制度というものです。【了】

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2016年6月 8日 (水)

やはり腑に落ちない!長期処方の原則禁止

 いくつかの慢性疾患で長期間の治療を継続的に行っている高齢者の方も多いことでしょう。この春から今までOKであったものが突然NGになったことがあります。それは長期処方がご法度になったことです。かかりつけ医から、「長期処方(60日・90日)ができないことになったので次回から毎月来院して下さい」と言われ困っている方もおいでかと思います。かくいう筆者の経験です。

 このため患者への負担が大幅に増えました。通院するための時間と交通費はもちろん、毎月受診となるための再診料・処方箋料・指導管理料など従来は2ケ月あるいは3ケ月に一回でよかったものが余分な負担としてのしかかってくるのです。(薬代は変わりません)国を挙げて医療費抑制に取り組んでいる最中、「もっと病院にいらっしゃい」とは腑に落ちません。

その原因を医師にも調剤薬局の薬剤師にも尋ねましたがもうひとつ要領を得ないものでした。診療報酬が変わったためというのが表向きの理由です。どうしても納得がいかずいろいろ調べてみました。

 処方せん料等の算定要件に長期投与についての取り扱いが加算されたためと分かりました。医師が処方する投薬量については、予見することができる必要期間に従ったものでなくてはならないこととされており、長期の投薬にあったっては次の通りとするとして以下が記載されています。

①30日を超える投薬を行う際には、長期の投薬が可能な程度に病状が安定し、服薬管理が可能である旨を医師が確認する。病状が変化した際の対応方法等を患者に周知する。

②上記の要件を満たさない場合には、原則として以下のいずれかの対応を行うこととする。

・30日以内に再診する

・200床以上の保険医療機関にあっては、200床未満の保険医療機関又は診療所に文書による紹介を行う旨の申出を行う

・患者の病状は安定しているが服薬管理が難しい場合には、分割指示処方せん(処方薬の長期保存の困難その他の理由によって分割して調剤する必要がある場合には、分割調剤を行うこと) を交付する

とても難しいことが書き並べられているようにみえますが、これまでかかりつけ医がやってきたことです。例えば糖尿病の患者さんに対しては服薬指導はもちろん、運動や食事などの様子を聞き、さらに定期的な血液検査などによってチェックし①はクリアしているはずです。にも拘らず、今回長期処方を抑制(明確に禁じていない)したために被害を受けるのは慢性疾患患者や高齢患者にほかなりません。最近、いつも行く調剤薬局で聞いたところ、「60日処方や90日処方する医療機関は見かけない」と言っており、原則禁止に等しいのが現状です。

 今度受診したら、「どうして長期投与ができなくなったのですか」と是非聞いてみて下さい。薬局の薬剤師さんにも同じ質問をしてみて下さい。「きまりなんだよなあ」とか「診療報酬支払基金に聞いてみます」とか明確な答えは返ってこないはずです。この問題の背景には薬の大量な飲み残しがあると推察できます。しかし、長期投与の抑制で残薬問題が解決すると思えません。次元の違う問題を慢性疾患患者や高齢患者に転嫁せず、多様な声に厚労省は是非耳を傾けて欲しいと思います。【了】

 

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2015年8月27日 (木)

1錠8万円とはこれ如何に!ただ驚くばかり

 1錠8万円也(正確には1錠あたり8万171.3円)のC型肝炎治療薬が来月発売されます。米製薬ギリアド・サイエンシズの「ハーボニー配合錠」(一般名レジパスビル/ソホスブビル配合剤)です。ハーボニーは1日1錠、12週間投与する必要があり、1回の治療にかかる薬剤費は約673万円にもなります。単純に額面からいえばこの薬を買える人がどれくらいいるのかと思ってしまいます。

 確かにC型肝炎の患者さんにとっては朗報であろうと思います。この薬は肝炎治療の主流となっている副作用が強いインターフェロンを使わないで治療でき、日本人のC型肝炎患者の約7割を占める「1型」と呼ばれる遺伝子型の肝炎に効果があるとされているからです。

 それにしても薬の値段はどうやってつけられるのでしょうか。大きな疑問です。これからも高価な薬がどんどん生まれて来るでしょう。人の命も金次第というご時世に拍車がかかるかも知れません。「1錠30万円、この薬を飲めば治る」時代の先駆けなのでしょうか。

薬の値段(薬価:1点10円)の決め方には二通りあります。

①類似薬効比較方式といわれるもので、対象となる病気や薬の作用などが似た薬がすでにある場合の決め方です。既存の薬の1日薬価(1日服用分の薬価)を基本に、その新薬が効果的か、画期的かなどを評価し、さらに外国の薬価とも比較して決めます。

②原価計算方式で新薬と既存の薬が比較できない場合の決め方です。製薬企業が提示する製造(輸入)原価、販売や流通の経費などから薬価を決めます。

 ①の場合にはすでにリファレンスとなる薬価がありますから比較的決めやすいと言えます。ところが問題は②です。画期的な新薬の場合どうしてもメーカーの言いなりになりがちです。製造原価に含まれる研究開発費や人件費などは他者が切りこみにくい部分です。薬によっては市場規模も違いますから各種のアサンプション(仮定)によって決めるしかありません。つまりはメーカーの胸算用次第となります。もちろん薬価審議会で激論が交わされるでしょうがそれ以上はできません。欧米に比べ日本の薬は高いというのが通説です。長きに亘り開発に費やしたコストを回収せざるを得ない企業としては高いに越したことはないでしょうが、患者の視点に立った価格設定をお願いしたいものです。患者さんが日々どれほど精神的・金銭的に苦しみもがいているかを是非考慮して欲しいと思うのは無理なお願いでしょうか。

尚、「ハーボニー配合錠」が国の助成制度の対象になれば、月最大2万円で済むことになります。【了】

■参考情報

2015/8/30 日経新聞朝刊に以下の記事が掲載されました。

公的助成、手が届く薬に
C型肝炎ほぼ完治、1錠6~8万円 患者負担月2万円、がん防ぎ医療費抑制

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2015年8月26日 (水)

MSLの登場で医薬営業は変わるのか

 26日、日経新聞に載った「変わる医薬営業」という記事で、製薬企業の営業職にあたるMRの人数が大きく減少する一方で、急速に存在感を増している新しい職種としてMSL(メディカルサイエンスリエゾン)の存在が取りあげられています。

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 一般にはわかりずらい医薬品の販売ルートは、製薬会社から必ず医薬品卸を経て医療機関へ提供されるようになっています。MR(医薬品情報担当者)が主として医薬情報提供を行い、MS(医薬品卸営業担当者)が営業を担うことで役割分担をしています。これは製薬企業の行き過ぎた営業活動を抑制させ、純粋な情報提供に特化することを目的にしています。記事は何かと批判の多いMRの代替にMSLという専門家を配置することで営業目標の達成を図ろうとする企業の側面を伝えたものです。

 医薬品営業にMSLが加わることで何が変わるのでしょうか。 件のMSLの役割は「売上高を追わず、医師に薬剤や疾患などの専門知識を説明する」としていますが、これは本来、MRの仕事であったはずです。MRの実態が本来の医薬情報の提供ではなく営業であるという実態の裏返しと捉えられなくもありません。

 最近ではインターネットの普及で企業のHPにアクセス(登録要)すれば必要な情報を医師や薬剤師はいつでも簡単に入手することができます。一部の企業では電話対応の専門職(MRコールセンターのようなもの)を配して対応にあたっているようです。もはやMRは不要とも思える業界ですがそんな簡単な構図ではないようです。思いつくままにいくつかの問題点を記述します。

●訪問規制の壁に疲弊するMR

 最近のMR活動は昔に比べ格段に活動が難くなっています。曜日や訪問時間、担当者の割り当て、接待の禁止などいろいろなな制約のもとで医薬情報の提供を行っています。一部の病院では薬剤部が窓口となって医局への出入りを厳しく監視しています。規制がかかった裏にはこれまでの様々な不祥事(癒着・贈収賄など)があることはご存じの通りです。医師や薬剤師に会えなければ営業できませんから、普段出入りしている卸の力を借りてアポを取っているMRもいます。一方で、MRが医薬情報担当者として評価されていない実態もあります。

●MSLは従来からある機能

 製薬会社にはMRの補完機能を持つ学術スタッフ(サイエンティフィック アフェア)を抱えることが少なくありません。添付文書に記載された医薬品・診断薬の効能効果から副作用まで、MRでは対処しきれない学術的対応を行っています。彼らは医家向け研修会や学会の動向までアカデミックな部分を担います。いわばMSLということになります。多くは大学病院や基幹病院を担当し大御所と言われる重鎮医師のケアもしています。学術スタッフは学術部や企画・営業部に属しており直接的な営業目標は持っていません。会社全体または地域全体の成績が評価に加えられます。

●インターネット情報は万能か

 インターネットやMRコールセンターで営業活動を賄いきれるのかおおいに疑問です。HPに掲載できるのは既知情報であり、いわば表向きの情報でしかありません。世の中コールセンターばやりです。なかなか繋がらない上、要領を得ないなどが指摘されています。そもそも顔の見えないMRコールセンターに医師は電話しないでしょう。その前にMRを直接呼びつけることがほとんどです。医薬品の場合、インターネットやコールセンターは営業のサポート機能でしかありません。企業はなぜ大量のMRを抱えるのか自明の理です。因みに国内最大のMRを抱えるファイザーには2,500人ものMRがいます。

●face to faceはなくならない

 対面販売がなくならないと同様、製薬業界でもこの原則は変わらないでしょう。医薬品の説明において表に出てこない情報が医師や薬剤師にとって重要であり、それを公式文書で賄うことは至難の業です。例えば副作用ひとつとっても個体差(薬剤感受性、薬物動態、相互作用、ノンコンプライアンスなど)があり、特に高齢者における投与は慎重さが求められます。これらの特化した情報はあまり添付文書には詳しく書かれていません。また、他の症例や事例データを有しているのは製薬会社であり、医師は一番知りたいところです。

●MRの原点に戻るべき

 MR認定センターの説明には、『MRは医療機関を訪問することにより、自社の医療用医薬品を中心とした医薬情報(医薬品およびその関連情報)を医療関係者(医師、歯科医師、薬剤師、看護師など)に提供し、医薬品の適正な使用と普及を図ること、そして使用された医薬品の有効性情報(効き目や効果的な使い方)や安全性情報(副作用など)を医療の現場から収集して企業に報告すること、そして医療現場から得られた情報を正しい形で医療関係者にフィードバック(伝達)することなどを主な業務とする。』とあります。目先を変えたようなMSLの充実よりも、またプロパーと呼ばれてきた過去の経緯からしても、MRがMRらしく活動できるような体制にすることが製薬会社に課せられた義務と思えてなりません。【了】

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2015年8月 9日 (日)

処方箋に検査値掲載で調剤薬局は変わるれるか?

 一部の病院で検査値が掲載された処方箋を発行することで、調剤薬局の薬剤師に用法・用量のチェック機能強化を持たせる動きが始まりました。医師と薬剤師で処方薬のダブルチェック機能を果たすことが求められています。とても素晴らしいことで、これがきちんと行われれば患者にとって非常に安心感が増します。でも待てよ、そもそもはこの機能を持たせるために医薬分業が始まったのであり、処方箋に検査値を掲載するだけでこれが大きく改善するとは到底思えないのは筆者だけでしようか。

 医薬分業が日本で本格的に普及し始めたのは1970年代からで、日本薬剤師会によると2014年度には、68.7%の外来処方箋が病院外の薬局で調剤されています。ただ「医療機関に近い薬局で医師が言う通りに調剤を行うだけで、ほとんどチェック機能が果たされていない」という批判は少なくありません。医師の処方に疑問や不明点がある場合、薬剤師が医師に問い合わせをする「疑義照会」の制度がありますが、十分に活用できているとは言い難いのが実情です。

 薬局窓口は常に忙しくそんな暇はないといった雰囲気が漂います。調剤をこなすのに精いっぱいの薬剤師が処方箋に掲載された検査値を精査し、主治医に問い合わせする余裕などはありません。強いていえば患者からの副作用情報の訴えを取り次ぐのが精いっぱいでしょう。

 多くの医師は処方を含む臨床に関しては他者からものを言われたくないと思っています。また、格下と思っている看護師や薬剤師から意見を言われることを好みません。患者を直接診ているのは自分という自負が他者を寄せ付けないからです。これが先に述べた疑義照会の少なさにつながっていると推測されます。さらに言えば、検査値(生化学的検査)だけで処方する医師はいません。

 必要なことは、医師も薬剤師も互いの立場を尊重し合う「意識改革」が必要です。そのためには地域の医師会や薬剤師会合同の研修会・勉強会を通じてコミュニケーションを一層深めることが改善の第一歩です。

 仮に処方箋に検査値が掲載されていることで医師に対し疑義照会をする勇敢な薬剤師はまずいないでしょう。まずは、互いを認め合うことが本当の意味のダブルチェック機能を効果的なものにできるのではないでしょうか。【了】

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2015年6月28日 (日)

対岸の火事ではないMERS問題!受診する前に保健所へ相談

 下火になったかに見えるお隣り韓国のMERS(中東呼吸器症候群)問題は、いつ日本に襲いかかるかも知れず決して対岸の火事ではありません。中東地域への渡航歴のある人もしくはその接触者の発症がほとんどで、特に高齢の方や糖尿病、慢性肺疾患、免疫不全などの基礎疾患のある人で重症化する傾向があると言われています。

(出典*国立感染症研究所)MERS-neg

 6月27日付時事通信が「韓国保健福祉省は27日、中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルスの感染者が1人増え、182人になったと発表した。死亡者は変わらず31人。182人のうち、これまでにほぼ半数の90人が完治して退院。隔離対象者は2,467人で、前日より464人減った。」と伝えています。一時のパニック状態から見れば改善されつつあります。

 すでに国内でも予防・防疫体制をとっているとはいえ、韓国とは毎日何万人もの人々が行き来することからいつ感染者が出てもおかしくない状態です。渡航経験でいえば東京から九州に飛ぶくらいの感じで、あっという間のフライトです。観光客の激減で、つと有名な明洞地域には日本人を見かけなくなったようです。新大久保の韓流ショップは閑古鳥が鳴いているとも報道されています。

 見えない敵である細菌はどれほど注意しても完全に防ぎきれることはなく、常に監視する必要があります。厚労省はHP上で、「どの医療機関においても、事前に連絡なく感染症が疑われる患者が来院する可能性があります。患者に対して渡航歴、接触歴、症状等の申し出を促し、医療従事者もこれらの情報を必ず把握した上で、症状に応じた適切な感染予防策(患者にサージカルマスクを着用させる、他の患者と距離をとる、スタッフの感染予防策等)をとる必要があります。MERSに関しては、これまで、医療機関における患者間や患者から医療従事者に対する二次感染の症例が多数報告されています。ガイダンスを参考に、標準予防策、飛沫感染予防策等の徹底をお願いします。」と注意を呼び掛けてます。

 一般人の心得としては「危険」に近寄らない予防策は無論として、いつ感染してもアタフタしないこと、そしておかしいなと感じたら、医療機関に行く前にまずは保健所に相談することが求められます。なお、横浜市では相談窓口を設けています。(横浜市保健所トップページ)【了】

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2015年6月17日 (水)

厚労省の後発薬促進策は波乱含み?

 厚生労働省がジェネリック医薬品の数量割合を2020年度には80%まで引き上げるとの目標を打ち出しました。厚労省も本腰を入れ取り組む姿勢を見せたことは評価に値します。最近、調剤薬局で「このお薬はジェネリックに置き換えることができますがどうしますか?」といったやり取りが普通に聞かれるようになりました。患者も医療者もジェネリック医薬品の理解が進んだ(渋々という側面は否めませんが・・)結果と言えそうです。

 ジェネリックの普及によって全て万々歳かと思いきや、「目標時期」に関して様々な議論が巻き起こっています。あまりに性急な普及率の向上は、ジェネリックと新薬メーカー共にもろ手を挙げられない事情がありそうです。

 ジェネリックメーカーとしては目標に向かって走ることは大いに歓迎なのですが、今後5年間で供給体制を整えるのは至難の業であることから先延ばしを希望しているようです。大量生産できる体制が整っているジェネリックメーカーはごく一部で、現状維持若しくは2~3割程度の増産は可能であるものの一挙にとはいかない事情があります。また、後発薬といえども製品化するまでに相応の時間と経費がかかります。この流れについてこれないジェネリックメーカーはスピンアウトするしかありません。

 新薬メーカーにとっては長期収載品で収益を得ている現状から、できるだけ先延ばしして欲しいのが本音です。5年後に80%が後発薬に置き換わったら飯の糧を失うことになります。それこそ新薬をバンバン開発できなければ早晩経営が行き詰ります。今の時代そんな甘い話は転がっていません。数年前まで、盛んに行われた製薬業界の再編が再び起きかねない事態となるでしょう。

 ジェネリック医薬品については海外勢の激しい売り込みもあり、単に国内製薬企業の問題だけにとどまらず、世界的な大手企業が日本市場を虎視眈々と狙っています。国内メーカーがアタフタするのは絶好の機会なのです。こう考えるとジェネリック医薬品に限らず製薬メーカーとしても世界的製薬企業に対抗できる手段を考えなくてはならず、新たな経営戦略を考える必要があると思えてなりません。新薬・ジェネリック共に飲み込まれてしまうリスクを今から考えておく必要がありそうです。【了】

【補足情報: 厚生労働省医政局経済課長の城克文氏は6月13日、浜松市で開かれた日本ジェネリック医薬品学会学術大会で講演し、後発医薬品の急激な使用促進は「医薬品の供給システム全体に大きな影響を及ぼす」と懸念を表明した。後発品の数量シェア目標値をめぐって経済財政諮問会議からは「2017年度末までに80%以上」との意見が出ているが、厚労省は「20年度末までに80%以上」の新目標値を提案している。城氏は、短期間での急激な変化は新薬メーカーの創薬力を削ぎ、医薬品卸の経営にも影響を及ぼすとし、新目標値は円滑に移行できる「ぎりぎり」の指標と訴えた。

 今年1月時点の調剤医療費上の後発品の数量シェアは58.4%。全体では53%前後と推定されるため城氏は、現行ロードマップでの目標値「17年度末までに60%以上」を1年前倒しして16年度末までに達成することは「視野に入っている」と言及。しかし、「だからさらに高い目標をすぐに達成できるかというと、それは違う」と説明した。(薬事日報2015/6/17)】

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2015年6月16日 (火)

後発薬のMRは高度な専門知識不要なのか!?

 医薬品の拡販はMR(医薬情報担当者)が担っています。医薬品に関する高度な専門知識を持つ人で、主に医療機関(病院・診療所・薬局・検査センターなど)に対して自社製品の学術的情報を提供しています。製薬協が定めるMR資格を必要としています。

 経営戦略として派遣MRを多用する製薬会社が増え、派遣会社には時々に必要なMR派遣要請が舞い込んでいます。派遣MRが決して劣るわけではありません。レキッとした有資格者で、新薬メーカーでは特定商品(新薬の上市やマーケットの底上げなど)拡販時に力を発揮します。このためMR専門の派遣会社があるくらいです。

 ここにきて後発薬のMR不足が考えられています。政府の後押しで2020年には数量ベースで80%を目標とする案が議論されているからです。当然、後発薬メーカーは相応のMRを確保する必要に迫られます。しかし、MRに高度な専門知識は不要とばかり、自前から派遣に切り替えようとしています。コストを抑えようとの算段で、便乗して暴利を企む派遣会社も同列と言えるでしょう。

 ここで疑問です。後発薬メーカーのMRは高度な専門知識は本当に不要なのでしょうか。実質、営業マンとみなされるMRがいれば売れると考えているのでしょう。とすれば、恐ろしいことです。家電や衣料を売るのとは違い、直接生命に関わるものです。しかも、ジェネリックは新薬と全く同等ではありません。難しいことはさておき、物質特許や製剤特許などのため、各社は様々な工夫をして後発薬を製造しています。

 薬の薬理作用や副作用といった問題は新薬だけのものではなく、後発薬でもきちんとした情報提供が求められます。後発薬だからいいかげんなMR(=うだつの上がらないMR)でもいいという考えがジェネリックメーカーにあるとすれば大きな間違いです。不幸にして、もし情報不足により重大な薬禍に陥れば、一時の安易な対応が企業の致命傷となるでしょう。【了】

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焦りが生んだ不適切広告?武田薬品に業務改善命令

 武田薬品といえば知らない人がいない国内有数の製薬企業です。高血圧治療薬「ブロプレス」を巡り不適切な広告を行った問題で12日、厚労省から医薬品医療機器法(旧薬事法)に基づき、業務改善命令を受けました。

 京都大などによる高血圧治療薬「ブロプレス」と他の薬を比べる臨床研究で、効果に明確な差がなかったにもかかわらず、広告では顕著な差があるかの表現で、結果的に誇大広告につながったとするものです。武田薬品は6月12日、「本件は、高血圧治療剤であるブロブレスの血圧低下作用や安全性について疑義が生じているものではありませんが、今回の誇大広告による業務改善命令を受けたことを真摯に反省するとともに、この度の処分により、患者の皆様や医療関係者の皆様をはじめ、関係するすべての皆様に対しご心配をおかけしておりますことを、心よりお詫び申し上げます。」との社告を出しました。

 同社は国内製薬首位で生活習慣病関連に強みを持ち、欧米では潰瘍性大腸炎薬など新製品が好伸し、中国市場でも好調を維持しています。最近ではがん治療薬に力を入れています。一方、柱の降圧剤は後発薬に食われ国内後退を余儀なくされています。また、米国では糖尿病薬訴訟の莫大な和解関連費用負担などから経営環境は厳しものがあります。

 少しでも他社との優位性を訴えたいばかりに決してしてはならない誇大広告(特に医薬品は厳しい規制がある)へ足を踏み入れてしまったツケは今後の業績にじわりと効いてくるものと考えられます。本来、誇大広告などコンプライアンスに係わる問題は専門の部署で厳格なチェックが行われます。念には念を入れているはずです。そこをすり抜けたとしたら企業関与が疑われても仕方ありません。この裏側には激しい競争と目標達成という重い事実があり、その焦りが露呈したのではないかと思えてなりません。

 これを機に、社告にあるように「広告資材等の審査体制の強化や、作成および審査に関わる社員・管理職への教育訓練の充実」は勿論、製薬会社としての使命を今一度肝に命じ、社内体制を再構築し、タケダマークを再び輝かしいものにして欲しいと思います。【了】

参考:医薬品医療機器等法にかかる厚生労働省からの処分について

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2015年6月 1日 (月)

外来受診時さらに100円追加?自民特命委で検討

 自民特命委員会が社会保障費の抑制策の一環として、後発薬の利用促進などのほか、外来の受診時ごとに100円などの一定額を支払ってもらう定額負担制度の導入を真剣に考えているようです。現在の医療費はかかった費用の1~3割を患者が負担していますが、それに加えて一定の金額(例えば100円)を加算する医療費定額制度を検討しているというものです。

 医療費は患者の自己負担分を除いて、12年度の35兆円から25年度には54兆円に膨らむ見通しであることから、現在の患者負担に上乗せすることで少しでも医療費抑制を図ろうとするものです。これから議論になること間違いありません。国民皆保険制度は、国民誰しもがいつでもどこでも同じ料金で医療機関を利用できるようにと始まった制度で、患者の負担額は国の基準によって決められています。この負担割合の変更かと思いきや、さらに定額を加算するということにどうもすっきりしません。

 現在の国民皆保険制度は、 「すべての国民をなんらかの医療保険に加入させる制度。医療保険の加入者が保険料を出し合い、病気やけがの場合に安心して医療が受けられるようにする相互扶助の精神に基づく。日本では 1961年に国民健康保険法(昭和33年法律192号)が改正され,国民皆保険体制が確立された。(コトバンクより) 」もので、実施実態として世界に例のない皆保険制度として定着しています。

 医療費抑制策を何とかしなければと思う気持ちはどなたもお持ちでしょう。急激な高齢化を受け日本の医療費は増えこそすれ減ることはありません。このため薬価改定やジェネリック医薬品の普及、高齢者の高所得者には応分の負担、更には薬の無駄をなくそうと処方薬の再利用など国は様々な施策を打ち出しています。ところがここにきて万策尽きたのか、大議論必至の国民皆保険制度の改定ではなく、姑息な定額負担制度の追加導入という新手を編み出そうとしているのです。

 今後この制度が導入されて再び行き詰ったら値上げへと動くでしょう。応能負担ではなく定額制の更なる拡大は低所得者にとっては負担が重くのしかかります。国民皆保険制度の互いに助け合う精神から逸脱することになります。単に100円程度ならと思いがちですが定額制の追加導入は、国民皆保険制度の根幹にかかわるものと認識すべきでしょう。

 なお、2004年4月から新たに大学病院などで試験的に導入されている「医療費定額払い」 とは別次元の話です。【了】

 

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